雷鳥の生息数は全国で約1,700羽|山域別データと50年の推移

日本の高山にすむ雷鳥(ニホンライチョウ)の生息数は、全国でおよそ1,700羽と推定されています。1980年代の推定約3,000羽からほぼ半減した計算で、国の特別天然記念物でありながら絶滅の危機にある鳥です。この記事では、環境省・富山県・長野県が公表した調査結果をもとに、全国の総数と山域ごとの生息数、50年間の推移、そして数が減った理由をまとめて解説します。

雷鳥の生息数は全国で約1,700羽

長野県が公表している資料によると、雷鳥の生息数は1980年代には全国で約3,000羽と推定されていましたが、2000年代には約1,700羽に減少したとされています。

注意したいのは、この「約1,700羽」が全国規模のまとまった推計としては最後のものであり、その後は全国一斉の総数調査ではなく、山域ごとの「なわばり数」調査が中心になっている点です。そのため「今この瞬間に日本全国で何羽いるのか」を示す新しい数字は存在せず、実態は山域別のデータから読み取ることになります。

雷鳥が生息しているのは、北アルプス・乗鞍岳・御嶽山・南アルプスの高山帯です。かつて生息していた中央アルプスと八ヶ岳では、いったん絶滅したとされています(中央アルプスはその後、後述する復活事業が進行中)。分布の北限にあたるのが新潟県妙高市の火打山で、ここも環境省の保護増殖事業の対象になっています。

山域別に見る雷鳥の生息数【調査データ】

雷鳥の調査では、繁殖期にオスが縄張りを主張する習性を利用して「なわばり数」を数え、そこから生息数を推定します。主要な山域の最新の公表データは次のとおりです。

山域 調査年 なわばり数 推定生息数 公表元
立山地域(室堂平周辺) 2021年 141 324羽以上 富山県
北アルプス北部(白馬乗鞍岳〜杓子岳) 2025年 102 長野県
中央アルプス 2025年 83 約190羽 環境省

立山地域:推定324羽で調査開始以来の最多なわばり

富山県は、特に生息数の多い立山地域について原則5年ごとに生息数調査を行っています。2021年(令和3年)の調査は、室堂平を中心に雄山・別山・浄土山など1,070ヘクタールを対象に、富山雷鳥研究会を中心とした延べ101名体制で実施されました。

その結果、141のなわばりが確認され、なわばりを持つオス141羽・メス143羽に、なわばりを持たない「アブレオス」40羽を加えて、少なくとも324羽の成鳥が生息していると推定されています。前回2016年(平成28年)調査の295羽から約10%の増加で、なわばり数は調査開始以来もっとも多い記録となりました。

日本国内で雷鳥の密度がもっとも高いのがこの立山・室堂周辺であり、「雷鳥に会いたい」なら第一候補になる理由がこの数字に表れています。

北アルプス北部:102なわばりで過去最多

長野県は2025年6〜9月に白馬乗鞍岳から杓子岳までのエリアを調査し、102のなわばりを確認したと公表しました。これは過去の調査と比べても最多で、この地域では生息個体数が安定していることが確認されたとしています。

調査 白馬乗鞍岳 小蓮華山 白馬岳 杓子岳 合計
2025年(長野県) 21 43 27 11 102
2017年(長野県) 11 15 13 39
1979〜1981年(信州大学) 11 14 19 12 56

中央アルプス:一度絶滅した山域で約190羽まで回復

中央アルプスの雷鳥は約50年前に絶滅したとされていましたが、2018年7月に登山者がメス1羽を発見したことが転機になりました。この個体は北アルプス方面から飛んできたと考えられ「飛来雌」と呼ばれています。

環境省は2020年以降、乗鞍岳から移送した3家族19羽と飛来雌1羽の計20羽を出発点に、中央アルプスに雷鳥を復活させる事業を進めてきました。その成果は次のように現れています。

  • 2024年度:58なわばり・計130羽
  • 2025年度:83なわばり・約190羽(2025年7月5日時点の速報値)と、1年で約1.4倍に増加
  • 中央アルプス最南部の越百(コスモ)山で初めてなわばりと抱卵中の巣を確認し、将棊頭山から越百山までの生息可能な範囲全体に分布が拡大
  • 飛来雌は2021年以降5年連続で繁殖が確認され、2025年6月28日にはヒナ6羽の孵化を確認

一方で課題も残ります。2024年9月に那須どうぶつ王国と大町山岳博物館から野生復帰させた雛7羽のうち、翌年度に生存が確認されたのは1羽のみでした。動物園で育った個体を野生に戻す技術は、まだ確立の途上にあります。

立山地域で見る、生息数50年の推移

雷鳥の生息数がどう動いてきたかは、1972年から継続している富山県・立山地域の調査がもっともよくわかります。

調査年度 推定生息数(羽) なわばり数
1972年(昭和47年) 267 104
1981年(昭和56年) 244 94
1986年(昭和61年) 213 95
1991年(平成3年) 333 132
1996年(平成8年) 334 124
2001年(平成13年) 167 73
2003年(平成15年) 225 100
2006年(平成18年) 245 104
2011年(平成23年) 284 120
2016年(平成28年) 295 125
2021年(令和3年) 324 141

この表からは2つのことが読み取れます。ひとつは、2001年に167羽まで激減したこと。富山県はこの落ち込みを受けて、通常5年間隔のところ2003年に中間調査を追加しています。もうひとつは、その底から2021年の324羽まで20年かけて回復してきたことです。

つまり雷鳥の生息数は、全国的には長期的に減少している一方で、立山や北アルプス北部のように保護が行き届いた山域では持ち直している、というのが実際の姿です。

雷鳥の生息数が減った理由

長野県は、雷鳥が絶滅危惧の状態にある要因として次の点を挙げています。

  • 捕食者の増加:観光開発や登山者が出すゴミによって環境が悪化し、それに伴ってキツネやカラスなどが高山帯まで進出した
  • 地球温暖化の影響:高山帯という限られた生息環境そのものが縮小する
  • ニホンジカによる食害:シカが高山植物を食べることで、餌場と身を隠す場所が失われる
  • 観光開発:生息地の分断や人の立ち入りによる繁殖への影響

特に深刻なのが捕食者の問題です。本来なら高山帯にいなかったキツネやテンが、人の出したゴミを目当てに標高を上げてきた結果、雷鳥が「天敵の少ない高山で生き延びる」という戦略そのものが崩れつつあります。雷鳥がどんな動物に狙われるのかは、雷鳥の天敵を知る:自然界での生存戦略と保護対策で詳しく紹介しています。

生息数を回復させるための取り組み

環境省は「ライチョウ保護増殖事業計画」に基づき、複数の事業を並行して進めています。

捕食者対策

中央アルプスと南アルプスでは、山小屋周辺に居ついたテンやキツネの除去が実施されています。雷鳥が本来生きられる生態系を取り戻すことが目的です。

生息地の環境改善(火打山)

新潟県妙高市の火打山は雷鳥の生息地の北限にあたります。温暖化によってイネ科植物が優占し、餌場となる高山植生が失われつつあったため、2020年(令和2年)から環境省と妙高市が協力してイネ科植物の除去を続けてきました。

6年間の作業の結果、事業区のひとつ「ライチョウ平」では2026年7月にハクサンコザクラの群落が形成され、本来の高山植生への回復傾向が顕著に見られたと報告されています。以前はイネ科植物のなかにアオノツガザクラが点在する程度でしたから、餌場としての質は確かに戻りつつあります。

ただしライチョウ平では2008年以降、秋に群れが集まる様子は確認されておらず、雷鳥が戻ってくるかどうかはこれからの課題です。作業は当初の年1回から年2回に増やされ、ライチョウ平に加えて影火打周辺にも新しい事業区が設けられました。

動物園での飼育と野生復帰

那須どうぶつ王国、市立大町山岳博物館、長野市茶臼山動物園、いしかわ動物園などで飼育された個体を野生に戻す事業も進んでいます。遺伝的多様性の確保と野生復帰技術の確立が狙いで、雛だけでなく成鳥も対象に含める取り組みが行われています。

雷鳥がなぜ手厚く守られているのかという制度面の背景は、雷鳥が天然記念物に指定された理由とその保護活動についてもあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

雷鳥は今、日本に何羽いますか?

全国規模の推計としては約1,700羽(2000年代)という数字が使われています。その後は全国一斉の総数調査ではなく山域ごとのなわばり調査が中心のため、これより新しい全国総数は公表されていません。

雷鳥の生息数がもっとも多いのはどこですか?

富山県・立山地域です。室堂平を中心とした約1,070ヘクタールだけで、2021年の調査で少なくとも324羽が生息していると推定されています。生息地ごとの違いは雷鳥はどこに生息しているのか?日本と世界の雷鳥分布・観察スポットで解説しています。

中央アルプスの雷鳥は絶滅したのではないですか?

約50年前にいったん絶滅したとされていましたが、2018年に発見された1羽のメスをきっかけに復活事業が始まり、2025年時点で83なわばり・約190羽まで回復しています。

なわばり数と生息数は何が違うのですか?

なわばり数は繁殖期につがいが構える縄張りの数で、通常はここにオス1羽とメス1羽がいます。生息数はそこに、なわばりを持てなかったオス(アブレオス)などを加えて推定した成鳥の数です。そのため生息数はなわばり数の2倍強になることが多くなります。

北海道に雷鳥はいますか?

ニホンライチョウは北海道には生息していません。北海道にいる「エゾライチョウ」は名前が似ていますが別の種で、高山帯ではなく森林に暮らします。

まとめ

雷鳥の生息数について、この記事の要点を整理します。

  • 全国の推定生息数は約1,700羽。1980年代の約3,000羽からほぼ半減した
  • 立山地域は2021年調査で141なわばり・324羽以上と、国内最大の生息地
  • 北アルプス北部は2025年調査で102なわばりと過去最多
  • 中央アルプスは20羽から始まった復活事業で約190羽まで回復し、分布も全域に拡大
  • 減少の主因は、ゴミに誘われた捕食者の高山帯への進出、温暖化、シカの食害
  • 2001年に167羽まで落ちた立山が2021年に324羽まで戻ったように、保護の手が届いた山域では回復も起きている

数字だけを見れば厳しい状況ですが、山域ごとに見ると回復の兆しも確かにあります。雷鳥が絶滅危惧種とされる背景をさらに知りたい方は、雷鳥が絶滅危惧種に指定された理由とその保護活動の現状もご覧ください。

参考資料

  • 環境省 信越自然環境事務所「中央アルプスにおけるライチョウの生息数増加と分布範囲の拡大について」(2025年7月7日)
  • 環境省 信越自然環境事務所「火打山におけるライチョウ生息地環境改善事業の成果について」(2026年8月3日)
  • 富山県「立山地域におけるライチョウ生息数調査の結果(R3)」
  • 長野県「令和7年度ライチョウ生息状況調査の結果をお知らせします」(2026年3月6日)
  • 長野県「ライチョウ(特別天然記念物)」
雷鳥好きの雪羽

こんにちは。
「雷鳥と北アルプス」をのんびり運営している、雪羽(ゆきは)です。

子どもの頃に北アルプスで見かけた一羽の雷鳥が忘れられず、
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このサイトでは、北アルプスの自然や雷鳥にまつわる話、
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